債務整理案件は、依頼者それぞれ千差万別です。
借入先ごとに対応も異なりますから、状況に合わせて業務にあたる必要があります。
そんな債務整理のご相談において、司法書士事務所としても頭の痛い債権者がいます。
…と書くと、大抵の方は闇金を想像されるのではないでしょうか。
実は、国や地方自治体なんです。
つまり、税金の滞納です。
(闇金からの借り入れについては、警察へのご相談をおすすめします)
一般的な債権者…
カード会社や消費者金融等は、口座引落であったりATM入金であったりと、支払い方法は異なりますが、毎月返済日が決まっています。
毎月の返済なので、一定の収入がある方にとっては家計プランに組み込みやすく、リボ払いであれば返済をルーチン化することも可能です。
カード会社等は、返済日に返済がないと、一週間程で電話がかかってきます。
それでも返済がなければ、納付書が郵送で届きます。
返済するまで、日にちをおいて、何回も電話がかかってきて、何通も通知が届きます。
返済をしていないという後ろめたさに加えて、債権者からの頻繁な連絡…早く返済しなくては!という気になりますよね。
対して、税金。
市県民税や所得税は、給与から天引きされている方もいると思いますが、自営業の方をはじめ、納付書で支払っている方も多いです。
だいたい納期が半期・四半期毎に決まっています。
毎月の返済ではないので、年単位で収支計画を立てている方でないと、見逃しがちです。
そして、年に1度届く納付書…納期まで余裕があるからと、しまい込んで忘れてしまったりもします。
税金の支払いは、ついついスルーしがちな要素がある上に、熱心な取立ての連絡もありません。
電話がかかってくることは、稀ではないでしょうか。
大抵、納期を過ぎてひと月程で「督促状」が郵送で届きます。
「ああ、そう言えば税金を払わなきゃいけなかった!でも今月は余裕がないし…」
と、また後回し。
一般債権者と比べると、督促の頻度は高くありません。
そうして支払わずにいると、差し押さえ通知が届きます。
差し押さえ通知がきた時点で、多くの方がこれは大変!と慌てて役所に連絡を入れます。
役所は、相談をすれば分割での納付を比較的柔軟に受け入れてくれます。
但し、感覚的に、一回当たりの支払い金額が大変高額です。
例えば、給与が手取りで20万程度しかない方でも、月々5万円ずつ納付するように言われるのです。
加えて、14.6%の遅延金がかかります。
一般債権者の任意整理では、こんなに厳しい返済を迫られることはありません。
収入から取れるだけ取ろうと考えれば、生活が立ち行かなくなります。
生活が立ち行かなくなった債務者は、最終的に破産するしかありません。
破産して免責許可決定が出れば、貸付金の回収は不可能です。
任意整理で月々無理のない返済プランで和解できた方が、貸付金の回収ができるのでメリットが大きいのです。
では、役所はどうして高額な分割返済を求めてくるのか。
税金については、破産しても支払い義務は残るのです。
意地の悪い言い方をすれば、役所にとっては破産されても痛くないので、生活費や一般債権者への返済について考慮する必要がないと言えます。
今は税金を例えにお話ししましたが、国民健康保険料や国民年金についても同様です。
債務整理のご相談にいらっしゃる方の収支を伺うと、税金滞納分の返済で家計が圧迫されているケースが非常に多いです。
任意整理をご希望の方でも、税金の分割返済を考慮すると、一般債権者に返済する余裕が全くありません。
もう一度、役所に月々の返済金額の減額を交渉してみて下さいとお願いするのですが、断られてしまうようです。
一般債権者に返済する余裕がないということは、もう破産するしかありません。
そして、破産しても税金滞納分は支払うしかありません。
税金の滞納があるかないか、というのは、債務整理の方針決定において重要な判断材料になるのです。
※勿論、借り入れ状況や一般債権者によって、過払い金の回収や元本減額が見込める可能性もあるので、税金の滞納がある=破産ではありません。ご不安な方は、ご相談下さい。