今回は、司法書士が受任する際に依頼人の方にご協力頂いている「本人確認」と「意思確認」について。
司法書士は、その依頼が「本人からのものであるか」「きちんとした意思に基づいての依頼であるか」を確認する必要があります。
弊所では、登記・裁判事務関わらず、なりすましによる依頼を防止するため、受任する際にご本人確認を実施しています。
具体的には、身分証明書のコピーを頂戴し、簡単な質問を何点かさせて頂きます。
これは、司法書士法及び、平成20年に施行された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づいて行っています。
「犯罪による収益の移転防止に関する法律」…ゲートキーパー法とも呼ばれます。
マネーロンダリングや、テロ資金供与対策のための法律です。
例えば、銀行等でも一定額以上の振込をする際に、身分証の提示が求められることがあると思います。
これも同法に基づいて行われているものです。
身分証明書は、住所・氏名・生年月日が明記されている、写真付きのものでなくてはなりません。
多くの方は免許証をご提示いただくことになります。免許証の返納をされた方は、運転経歴証明書も公的に写真付き身分証明書として使えます。

運転免許証をお持ちでない方は、写真付きの身分証明書自体ないという事も多いです。
そういった場合には、健康保険証と年金手帳…といったように、二種類の身分証を提示して頂いてます。
ここ数年でマイナンバーカードも普及してきています。裏面にマイナンバーが記載されていて、むやみに他人に知らせてはなりませんから、身分証として携帯する方はあまり多くありません。
今後は保険証と一体となるとも言われているので、持ち歩く方も増えていくかもしれませんね。
マイナンバーカードも公的に写真付き身分証明書となりますので、お持ちであればそちらでも本人確認はできます。

運転免許証がない方で、パスポートを代用したいとお申し出を受けることがあります。
パスポートは発給手続きは厳格なのですが、住所が空欄で、ご本人が手書きで記載する様式となっています。
ですので、パスポートの状態やご依頼の内容によっては、別の身分証の提示をお願いすることになります。
さて、ご本人確認と同様に、受任に際して重要なのが「意思確認」です。
簡単に言うと、司法書士に依頼することによって、どのような結果が生じるか、きちんと認識・判断ができているかの確認になります。
通常の業務で言えば、本人がご依頼にいらっしゃった場合は、当然「目的」があってのご依頼ですから、ご本人に意思能力があると考えられます。
問題になるのは、例えば、不動産の売主さんがご高齢の方の場合です。
「今日はいいお天気ですね」という質問に対して「そうですね。昨日までは雨で肌寒かったわ…」という会話があったとします。
本当に「昨日は雨で肌寒かった」としても、これだけで意思能力があるとは判断できません。
また「これ食べる?」という質問に対して「今はお腹がいっぱいだから、いらない」と意思表示できたとしても、意思能力があると言えません。
不動産の売却において、様々な手続きが必要になりますから、当然司法書士から説明は致します。
「難しいことはよくわからないから…先生にお任せします。これにサインすればいい?」
となると、売主さんは果たして今回の売却について、きちんと理解されているのか、慎重に考慮していく必要がでてきます。
勿論、お年を召すと、年相応に忘れっぽさがでたり、言動に変化が現れることが、どなたにもあると思います。
ですので、そういった方の全てにおいて、意思能力がないと判断をするわけではありません。
ご不安な場合は積極的に状況をお知らせ頂きたいところです。
何も知らされず決済に挑んでみたら、意思能力に欠けていた…となると、司法書士としては決済をお受けできない事になります。
高齢者な方など意思能力に問題がある場合には、家庭裁判所に成年後見人等を申立てをするなど手続きを進めてから、ということになります。
当事務所では成年後見人の選任申立て手続きを承っておりますが、この手続きには相応の期間が必要となるため、売買にせよ、その他の相続や贈与のお取引、お手続きに関しても後見人等が決まってから改めて…ということになりますので、ご留意ください。
ご相談や各種お手続きの流れは → ご相談の流れ のページにてご確認ください。