死後事務委任契約ってなに?
近年の終活に対する取り組みや相続対策を考える中で、死後事務委任契約について触れる機会が増えてきております。
遺言や任意後見制度でカバーできない部分の死後の諸手続きを、遺族の代わりに行う契約のことで、特におひとり様の高齢者、親族が居ても頼るのが難しい高齢者などを中心に話題となっているようです。
葬儀の施行や遺品整理、賃貸住宅の解約や各役所での事務手続きなどを委任することができます。
遺言書や任意後見契約と合わせてご検討される方が多いようです。
参照:神奈川県ホームページ>第2章終活の参考となる制度について>6.死後事務委任契約について PDF
このブログでは死後事務委任契約についてご説明していきます。
もくじ
- 遺言でカバーできない範囲とは?
- 死後事務委任契約で出来ること
- どうやって死後事務委任を有効にするの?

1.遺言でカバーできない範囲とは?
死後のことは遺言書に全部かけばよいのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
ですが、法的な効力に関しては財産分与と処分方法についてのみ有効で、それ以外の手続きに関してはあくまで【お願い】という事になります。
財産部分以外はその意向通りにする義務までは生じないのです。
さらに、自筆証書遺言に関しては、遺族が発見しても即座に開封するのはNG、遺言の内容を有効にするためには家庭裁判所での検認が必要であり、その手続きのおおよその目安としては1カ月前後となっています。
そうすると葬儀については死後1週間前後で執り行うことが多いと思いますので、葬儀の意向について知るのがお葬式の後 になってしまうという事も考えられます。

2.死後事務委任契約で出来ること
死後事務委任契約で出来る、具体的なものとして、
- 葬儀・埋葬・納骨に関連する事務
- 死亡の連絡
- 賃貸契約・借家の契約解除
- 各種費用の支払い・清算
- 遺品整理
- 官公所への届け出
- その他付随する事務・手続き など
ここ最近ではスマートフォンに関連するデジタル遺品についても問い合わせを受けることが増えました。

遺族、相続人、身近な親族がいない場合:お子様のいない夫婦・独身老人(子供のいない離婚した方も)などはその後のお墓の維持管理費を支払う人がいなくなってしまうということもあり、納骨、埋葬に関連して、先祖代々の墓・その後の永代供養などの費用負担を心配される方が多いようです。
あらかじめ一括でお墓の費用を負担・清算したり、終活の一環でお墓じまいをし、埋葬に関しては生前の思い出の海に散骨を(海洋散骨と言います)、という方もいらっしゃいます。
委任者の意向を盛り込み契約することになりますので、遺言書に書くべき内容、死後事務委任契約に書き記す内容などは専門家の助言を受けながら検討されることをお勧め致します。

3.どうやって死後事務委任契約を有効にするの?
委任者(依頼者)が、死後事務委任によって委任する内容と、誰に死後事務の執行を任せるのか(受任者)を決定します。
受任者には司法書士などの専門家、いらっしゃれば親戚や信頼のおける知人などを選ばれるケースが多いです。
死後事務委任契約に関しては、公正証書遺言を作成する流れと同じように、公証役場にて公正証書で契約を結ぶことになります。
公証役場への書類作成費用(10~15万円前後)が必要となり、司法書士などの専門家に手続きの依頼をする場合には報酬、その他に死後事務の執行に係る費用の預け入れなどが費用負担として発生します。
実際のところの終活関連の業者さんや司法書士などの専門家にご依頼頂く際の費用の相場としては、葬儀代などの実費や手続きの費用などを踏まえ、100万円~となるケースが多いようです。
実費負担や代行費用としては葬儀費用が比較的高額になりがちであり、依頼する内容はリストアップすると思いの外あったりします。
セット料金や見守りサービスなどと組み合わせてお安い金額を打ち出されている事業者もありますが、オプションで各種手続き費用が追加されるケースも多く、おそらく総額としてはあまり大差ない印象です。
死後事務をなるべく減らすために、生前準備も大切になってきますね。
まとめ

葬儀会社や金融機関などが主催している終活セミナーで死後事務委任や公正証書遺言、任意後見制度や民事信託などについてお聞きになる機会が増えていますよね。
いっぺんにたくさんの制度を聞いても整理がつかず、その後何度か提案・営業を受けてセカンドオピニオン的に当事務所にご相談に来られた方もいらっしゃいます。
独身の高齢者だけでなく、お子様のいらしゃらない高齢夫婦なども、他人に迷惑をかけずに人生の最後を美しく締めくくる方法として検討される方は増えてきております。
ただ、死後事務委任を依頼し、死後手続きの後に余ったお金は任意の団体への寄付に、というような場合には遺言の活用も不可欠なものになってきます。
まずは生前対策として身近な遺言から検討を始める方が多く、死後事務委任は費用面も踏まえて遺言の次のステップとも言えそうです。
所有する財産の状況や、どの制度を利用して何を依頼するか、内容により各手数料や実費などが変動いたしますので、ご相談の上しっかりと検討されるのがよろしいかと思います。
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