相続に伴い旧姓に戻す・復氏届を出す時の注意点

復氏届とは

 

結婚して苗字(氏)が変わり、その後、死別によって結婚前の 氏 に戻すことを 復氏 と言います。

 

離婚の際にも同様に旧姓に戻す手続きを行うことがありますが、離婚の場合と異なり、死別による復氏はその届出の有無及び時期について特に決まりがなく、そのままの姓でいるか旧姓に戻すか自由に選べ第三者の同意や家庭裁判所の許可などは不要です。

 

婚姻期間も短く、若くして配偶者を亡くされた方は、これからの人生を自分で生きて行くという時に、旧姓に戻し、再出発を図ろうとされる方もいらっしゃいます。

 

長く連れ添った夫婦であっても、夫婦やその親族との関係性によっては、配偶者の死後に配偶者の姓を名乗りたくない、と考える方もいらっしゃったりします。○○家のお墓に一緒に入るのはイヤ、など事情は様々です。

 

ここ最近の核家族化や、女性の社会進出、価値観の多様化の中で、選択的夫婦べつうじ制度=いわゆる夫婦別姓制度も検討されており、ご相談の中で、氏の変更について尋ねられることも増えてきています。

生前に夫婦別姓にするにはどうすれば? との問いも頂くこともあますが、まだ検討段階という事でいつから別姓に出来るかは決まっておりません。現状は法改正を待つのみです。

参照: 法務省の概要  >  組織案内  >  内部部局  >  民事局  >  民事に関する法令の立案関係> >  選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について

 

以下、復氏届のお手続きと注意点について、解説していきます。

 

復氏届の提出の流れ

 

復氏届は、お住いの役所に届け出を提出することで比較的簡単に手続きをすることが出来ます。

本籍地以外での届け出に関しては、戸籍謄本の添付が必要になります。

 

配偶者の死亡届を提出後であれば、とくに期限はなく、親族の同意も不要です。

 

結婚前のもとの戸籍に戻る(いわゆる実家の戸籍に戻る)か、新しい戸籍をつくるか、を選択することが出来ます。

 

子がいる場合で、子が結婚して戸籍を抜けている場合には関係ありませんが、子供が亡き配偶者の戸籍に残っているケースもあります。

子供の姓も変えて自分の戸籍に入れる際には、家庭裁判所に子どもの氏の変更許可申立を行い、親が新しい戸籍を作り、そこに入籍させる手続きが必要となります。

 

旧姓に戻すときの注意点

 

旧姓に戻すことでの注意点や、デメリットとなり得ることがあるので確認しておきましょう。

 

・復氏届を提出し、旧姓に戻ったとしても、相続権・遺族年金などの受給権は残ります。

従前の戸籍から旧姓に戻ったことで除かれるだけですので、相続放棄や限定承認を検討される場合には、通常通り3カ月以内の手続きが必要となります。

 

・復氏届の提出のみでは配偶者の親族(姻族)との関係は消滅しない点にも注意が必要です。

親族関係を法的に解消したい場合は、「姻族関係終了届」を提出します。復氏届と同様、期限はなく、夫の親族の同意は不要で、本籍地または住所地の役所に届け出ます。

 

・旧姓に戻すことで、亡き配偶者の親族が悪い印象を持つケースもあります。

経済的な援助の関係性、近くに住んでいる場合などは特に注意が必要かもしれません。

子供がいて、亡き配偶者の父・母がご存命の場合には、いずれ子供が亡き配偶者の代襲相続人として相続で関わる(孫が相続人になる)ことが多いでしょう。

 氏を変えたことで孫が相続人から外れることはありませんが、感情的な面での配慮が必要かもしれません。

 

・免許証やキャッシュカード、不動産の名義変更などの手続きが大変というのもあります。

身分証明書などの名義変更は、結婚の際に一度はしているものと思います。結婚後に各種サービスや手続きで作成したものも含めて、全て改めて旧姓に戻すことで手続が多く発生し、手間を感じることもあるでしょう。

不動産の権利証又は登記識別情報などの名義変更は見落としがちですが、不動産の売却や担保に入れてリフォーム融資などを受ける際には、名義を変えておかないと手続きは進まなくなってしまいます。

 

併せて、相続手続きの最中に復氏届を出すと、身分証明書や印鑑証明、戸籍謄本などを取得しなおすことにもなってしまいます。もし、旧姓に戻されることを検討中であれば、その旨もご相談下さい。

 

復氏届は簡単ですが慎重に

 

復氏の手続き自体は難易度はさほど高くなく、行うことが出来ます。

 

ですが、そのタイミングによっては親族の方達の心証を悪くしてしまう事や、相続などに関連した他の付随する手続きに影響を及ぼすことも考えられます。

 

相続登記や財産承継業務の手続きに付随して、復氏に伴う名義変更を合わせて行うことも可能です。

 

どの時期までにどの手続きを、というプランも事情によって様々ですので、まずはお気軽に司法書士等専門家にご相談頂くのが良いかと思います。

 

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