特別の方式の遺言【危急時遺言】

緊急時に病室や今わの際に書ける遺言の種類について

遺言書の作成について、以前ブログで触れました。(記事は「遺言書を書きたい」のページへ)

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類があるとお話ししましたが、実はこれらの【普通の方式】の遺言とは別に【特別の方式】の遺言があるのです。

今回は【特別の方式】の遺言について、解説したいと思います。

 

本来であれば、精神的・体力的ゆとりがあるうちに、遺言書を作成しておくことがベストです。

けれども、人間いつ何時、どういった状況の変化があるかわかりません。

 

病気であることが判明し、余命宣告を受けたとしても、まだ数日の猶予があれば、急ぎで公証人の先生に出張して頂いて、病室で公正証書遺言を作成することも、不可能ではありません。

また、自ら筆を取ることができて、尚かつ法的に有効な文面が作成できるのであれば、自筆証書遺言を遺すことはできるでしょう。

 

しかし、公正証書遺言や自筆証書遺言を遺すことができないような場合。

例えば、病気や突然の事故による大怪我などで、死期が差し迫っている状態において遺言を遺したい場合には、特別の方式の遺言【危急時遺言】を遺すことができます。

危急時遺言は、普通の遺言と全く異なった過程で作成されます。

 

まず、利害関係人ではない証人が3名必要です。

配偶者や子供といった家族は、基本的に相続人となる立場ですから、利害関係人です。証人にはなれません。

 

1.遺言者は、証人3名の立会いのもと、証人のうち1名に遺言の趣旨を伝えます。

2.遺言内容を把握した証人が、遺言の内容を書面にまとめます。

3.遺言内容をまとめた書面を、遺言者及び証人全員に読み聞かせ、遺言者の意思を反映したもので間違いないか、確認します。

4.証人3名が文書に署名・押印します。

5.作成後20日以内に、家庭裁判所による確認をもらいます。

※作成過程は以上のとおりですが、遺言者が亡くなった場合は、更に裁判所による検認が必要です。

 

 

危急時遺言の作成は、特殊な状況下、限られた時間内で行うことになります。

緊急で利害関係人以外の証人を3名手配するのも、中々難しいことです。

加えて、法的に有効な書面でなければ意味がありませんから、かなり慎重を期す必要があります。

簡単に作成できるものではないということを、まずご理解頂きたいと思います。

その上で、繰り返しになりますが、前もって万全の状態で遺言書を作成することが大事です。

 

 

 

※【特別の方式】の遺言は「危急時遺言」の他、「伝染病隔離者の遺言」「在船者の遺言」「船舶遭難者の遺言」などがあります。

いずれも読んで字のごとく、特殊な状況化における遺言の作成方法です。

これらの状況においては、遺言者のすぐ近くにいる方が、緊急で立会い、証人となるしか術がありません。

もしご質問があれば、お気軽にお問合せ下さい。

 

 

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