遺言を書くのに適した年齢とは?

そもそも何歳から遺言を書ける?

遺言書は法律的には満15歳以上であれば書くことが出来る、というのは法律で決まっています。

遺言書の作成に当たって、未成年であっても保護者の同意は必要なく、形式をしっかりと満たしていれば本人の意思や意向をしっかりと反映した遺言書を単独で作ることもできます。

むしろ、親御さんなどの法定代理人であっても、子供の代理人として遺言を作成することもできないルールとなっています。

 

さて、遺言書を作成するのは満15歳以上であれば誰でも作れるといっても、みんなが作っているわけではありません。一般的には60歳を超えるあたりで遺言について考え始めるケースが多いと思いますが、相続の手続きや遺言の執行の現場を見てきた中で、やはり、適したタイミングというのがあるとは思います。

 

そのタイミングは3つ

 

1.相続関係が変わるとき

 

 

2.財産状況が大きく変わるとき

 

 

3.思い立ったとき

 

 

それぞれのタイミングについて、解説していきたいと思います。

  

1.相続関係が変わるとき

・いわゆる婚姻関係の変化、子供が産まれるというのが当てはまります。

結婚すると相続関係が変わる

 

結婚、離婚、再婚、もしくは配偶者との死別が婚姻関係の変化です。

結婚をすると、ご自身の財産の相続に関しては、配偶者の方と、お亡くなりになった方のご両親又はご兄弟などになります。結婚したからと言って配偶者が単独で全ての財産を相続するわけではないので、親戚関係が良好でない場合にはトラブルになるケースも考えられます。また、離婚、再婚、前夫・前妻との間にお子さんがいる、というケースなども法定相続関係の変化が複雑になります。遺言書を書く場合でも、お亡くなりになって相続手続きを行う場合でも、確認・検討事項が増えますのでご留意ください。

 

お子さんが産まれた、という場合には法定相続関係者は配偶者と子供に変わります。保険の見直しなどを検討することも多いタイミングであり、万一の時に残された家族が不自由しないように、と考える方もいらっしゃると思います。

 

死別については、婚姻の年齢の傾向として男性が年上の場合が多く、

出典:人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻

男性よりも女性の方が寿命が長いため、

出典: 厚生労働統計一覧 > 生命表

ご主人が先に亡くなり、奥様がおひとりで生活する期間がおよそ10年前後となるケースが多いようです。(あくまで2020年時点の統計を基にした数字です)

例として、ご主人(父)が亡くなったときの相続で奥様(母)が財産を受け継ぐことに関しては、お子さまが異論を唱えるということは多くないようです。ですが、その奥様が10年前後経過してお亡くなりになるときには、子供たちが相続財産の分割において、意見が合わなくなるケースが少なからずあります。いわゆる『実家』と言われる不動産があってその処分の方法や、兄弟間の経済状況や関係性などで意見が合わないケースです。最低限の遺留分(それぞれの相続の取り分)に配慮した遺言書があればスムーズに故人の遺志が反映されます。

 

上記のもろもろのケースで、遺言書は有った方が良いものと思います。

 

 

2.財産状況が大きく変わるとき

マイホームを買ったとき、定年退職などで退職金を得たときが当てはまります。

マイホームに子育て、一緒に遺言も考えよう

 

 多くの場合では10年を超える長期住宅ローンを組むことが多いと思います。最近のローンの審査では、80歳までは返済期間として考慮する、ということもあるようなので、45歳から35年ローンを組むことも可能だそうです。(金融機関や個人の信用情報などにより異なります)住宅ローンに付随して、団体信用生命保険を組まれると思いますが、不動産という大きな財産と、同居のご家族の住居と将来の不安について考えるとき、遺言も一つの選択肢になってくると思います。

 

そして、おそらくもっとも遺言について考えるのが、定年退職のタイミングかと思います。

 

 

定年退職と遺言は終活の第一歩

 

60歳、もしくは65歳で退職し、年金生活が始まります。退職金が支給され、預貯金を取り崩しつつ年金を受給しながら生活を組み立てなおさないといけません。残された余生、セカンドライフを不安なく過ごすために、一度ご自身の財産などを棚卸する、という方も多いようです。お子様は独立し、結婚したり、お孫さんが産まれたり、それぞれ家庭を築いている時期でもあります。ご自身やお子様の家庭の状況や、経済状況なども変化が生じやすく、お亡くなりになったときに『相続トラブルに発展しやすい時期』でもあります。終活などと向き合い、エンディングノートなども書くときに、併せて相続を円滑にするための遺言書を残す、というのも選択肢に挙げてほしいものです。

 

上記のように財産の状況が変わるとき、60歳を超えるタイミングで遺言を書くことを考える人が多い、という理由が見えてくるように思います。

 

3.思い立ったとき

老後の安心した生活、そして子孫へと遺すメッセージとしての遺言の活用

 

このブログを目にした今、というのも一つのタイミングかもしれません。

遺言ならいつでも書ける、というのは半分は正解ですが、半分は間違っています。

例えば、大きなご病気が見つかったとき、残された家族のために遺言を書く、というのであれば間に合います。生命保険などと違って既往歴があるから加入できない、年齢が高いから保険料が高いなどの縛りがないので、タイミングとしてはいつでも書けます。余命宣告を受けたとき、というのも思い立ったときに当たるかもしれません。

ただ、認知症と判断されてしまうと、時期的にその診断後に書いた遺言が無効とされる場合もあります。65歳以上の5人に1人は認知症ともいわれています。

出典:厚生労働省 認知症施策推進総合戦略

まだ遺言を書いていない方は、自分だけはまだ大丈夫と思わず定年退職後・年金をもらい始めるタイミングで心身ともに健康なうちに遺言を検討してもらいたいものです。遺言を書くためにはご自身の財産・不動産を把握して、かなり長い文章を書いたりまとめたりしなくはいけません。まだいいか・・・と先送りしているうちに、体力と気力が低下して、判断力も鈍ってきてしまうと、そのまま書かずじまいでお亡くなりになる・・ということもあります。トラブルに発展するのを未然に防ぐ目的だけでなく、お孫さんに財産を届けたい、など故人の想いを反映するためにも遺言は活用してほしいものです。

 

書いといたほうがいいかな・・と思ったら、ぜひ遺言を書きましょう。

 

 

 

このブログを見られた40~50代の方へ

ご自身の遺言についてはまだ先でいいや、と思われたとしても、親御さんであったり、複雑な婚姻関係の方が周りにいる場合なども遺言を書くことをお薦めして回ってほしいものです。

 

当事務所では、せっかく書いた遺言が無効になってしまったり、紛失してしまったりすることが無いように公正証書遺言の作成をおすすめしています。

公正証書遺言の場合、公証人が作成するため、法的に無効になる心配がありません。

また、裁判所での検認手続なしで遺言書としての効力を発します。

 

 

業務のご案内ページ → 遺言 もご覧頂ければと思います。

 

 

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