付言事項で遺言に残すラストメッセージ

遺言の付言事項に残す遺族への感謝の手紙とメッセージ

このブログでお伝えしたいこと

  • 付言事項とはなにか
  • 遺言の大事なところ
  • 具体的な文例と注意点

付言事項とは何か

 

家族を争族から守るため、遺言は有効な手段です。

 

遺言は厳格に書式や書き方が決められておりますが、そこに付け加える言葉として、付言事項と言うのが存在します。

 

付言事項の部分については、特に決まったルールはなく、自由に書き記すことが可能です。

 

法的に有効性を持たせる部分と違い、自由にメッセージを書き記すという事で重要ではないかと言うと、そんなことはありません。

 

生前贈与があった場合、個人や団体に遺贈や寄付したい場合、事業承継が関わってくる場合、生命保険の受取人についてなど、生前に遺族全員に事情を周知できれば良いのですが、現実的に難しいケースも多く、付言に残すのがベターです。

 

相続人の理解を得て、その後の家族・親族の関係性が悪化する事を少しでも防ぎ、スムーズに相続手続きを進めるため、付言事項を活用していきましょう。

 

遺言の大事なところ

遺言を書く時のポイント法的に有効かつ気持ちが伝わるように

 

まず遺言では、その内容として、「誰に」 「何を」 と言うのを明確に決めます。

 

書き方でミスしないためにも、当事務所では公正証書遺言の作成をお勧めしています。

参照:公正証書遺言ができるまで

 

遺言書は法定相続分通りではなく、個人の意思を反映した遺産分割を指定することも多いため、遺留分に配慮した内容にまとめます。

 

遺言の骨子となる部分で非常に重要な部分です。

 

特定の遺族に対して、遺留分を目安に少なく分けるという事や、逆に取り分として多く遺すという事も、遺言ではよくあることです。

 

分け方によっては、一部の遺族の相続分が減ることもありますが、なぜ、そのような分け方を決めたのか、その経緯や過程、その気持ちを言葉に残す事で、相続手続きが円滑に進むという事があります。

 

ただ分け方を記しただけでは不公平に思う方も現れるのは当然と言えば当然です。「自分にも同じだけ取り分はあるはず・・・」 と、泥沼の争族に発展する事だって考えられます。

 

そういったケースで遺言に、その根拠として 

 

「これこれこういう理由で妻には自宅を遺し住まわせたい」 

 

「○○には住宅購入の援助で贈与をしたから」

 

「○○は介護を献身的にしてくれたから□□を遺贈する」など、

 

ひとつ説明が加わるだけで、納得性が大きく変わってきます。

 

生前の遺言の内容を、遺族みんなが知っているというケースは多くはありません。お亡くなりになって初めて遺言書の存在を知る方がほとんどです。

 

 

公正証書遺言を残しているケースであれば、内容として無効になることはありませんが、内容に不満を持つ人が現れるという事はあり得ます。

 

付言事項で遺族が納得する補足説明を記すことも重要だと言えます。

 

具体的な文例と注意点

遺言の文例と付言の文章のサンプル

 

付言事項は自由に書いても良い物ですが、参考となるひな形がないとどう書いて良いものか分かり難いです。

 

付言のひな形を作成してほしいと依頼を受けることもあり、ご依頼者の意向や遺言を書くに至った経緯、家族への想いをお聞きして素案にまとめることもありますので、参考になればと思います。

 

まず以下の流れを整理します。

  1. 家族への感謝
  2. 遺言を書こうと思った経緯
  3. 生前贈与や家族(主に子ですね)との金銭的な面での事案の説明
  4. 遺産分割の理由付けと遺留分とのバランス
  5. 遺言の本文法定事項との矛盾がないこと
  6. 死後事務委任などについて

上記を遺言の内容部分とあわせてヒアリングをすることで、付言の内容について素案を作成できます。

 

愛情に溢れたメッセージをお聞きして涙腺を刺激されることもあります。

 

プライベートな部分で恥ずかしいしあまり話したくない、というケースももちろんあります。

そういった場合には遺産分割の意向を元におおよその文章を作成し、何度かの校正を経て遺志が反映されるものか確認します。

 

 

付言の構成としては

 

1.家族への感謝

家族、親族への感謝の気持ちを込め遺言を作ったことを伝え、遺言への理解を得られるように。

特にお世話になった方へのメッセージは重要だと思います。

 

2.遺言を書こうと思った経緯

理由があって法定相続分通りではない分け方を指定するわけですから、その理由を説明することが理解への第一歩。

なぜ、そうしたのか?説明があれば理解を得られやすいでしょう。

 

3.生前贈与や家族(主に子)との金銭的な面での事案の説明

生前贈与を理由に、遺産分割割合を変えることはあります。兄弟姉妹でそれぞれ事情が違うケースで、当人は知っていても別の兄弟姉妹は知らない、という事もあります。親子間での金銭的な援助、貸し借りなどもあり、死後の遺産分割で不公平とならないようにバランスを取るため遺言を書くケースもあります。

 

4.遺産分割の理由付けと遺留分とのバランス

一部の遺族への遺産の集中、または少なく分ける、法定相続人以外への遺贈などをする場合には、補足説明が必要でしょう。理由があれば納得性が高まります。

 

 

5.遺言の本文法定事項との矛盾がないこと

付言と法定遺言事項と矛盾があっても、法定部分が優先されます。ですが、矛盾点があると遺族としては不安に思う事も出てくるかもしれません。食い違いが無いようにします。

 

6.死後事務委任などについて

死後の埋葬などについての意向を記すことも出来ます。

 

 

※注意点として 死後事務委任については、埋葬が終わってから遺言が出てきた・遺言を開いた、と言うことも起こり得ます。

特に自筆証書遺言の家庭裁判所での検認に日数を要することもあり、葬儀に関する意向が反映されない可能性もあるので要注意です。

 

 

文章の例 

<付言事項> 

 

私は妻の○○と、□□と△△2人の元気な子供に恵まれ、幸せな人生を送ることができました。ほんとうに、ありがとう。○○には住宅の土地と建物を残すことにしました。住み慣れた家と街で老後を過ごしてもらいたいからです。この土地と建物だけで法定相続分を超えますが、いずれは2人のものになるものと言う事もあり、子供たちはお母さんに対してどうか遺留分を請求するようなことがないよう、お願いします。2人にはできるかぎりの援助はしたつもりですが、□□が近くに引っ越して来てくれて、身の回りの世話などたくさん面倒をかけ、感謝してもしきれない思いです。□□に多くの現金を相続することにしたのは、そういう気持ちからです。不満もあるでしょうが、□□と△△2人で決して多くはない財産を争う事の無いよう、理解してくれることを祈っています。

 

 

上記付言は、妻に自宅を残し、近隣に住んで父の介護の世話をしていた子に多く現金を遺したい、という意向を付言にて補足した内容です。

 

まとめ

 

付言は遺言作成の必須の要件に含まれませんので、実務上はなくても有効な遺言書として成り立ちます。

 

ですが、家族・親族への最後の感謝やメッセージと共に、遺産分割の意向や、その内容を補足するような説明、それぞれの遺族や相続人への気持ちを添えることで、より、故人の意思を反映したものとして遺族の理解を得られやすくなります。

 

残された方達への最後のメッセージ、付言事項について解説いたしました。

 

内容については個別の事情に合わせたものになりますので、ご相談下さい。付言の内容を考えることもまた、ご自身の人生を振り返る良い機会となるかもしれません。

 

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