後見制度が高齢者を詐欺から守るかもしれない

認知症の高齢者に悪質な訪問販売詐欺の営業マンが語りかけている

 

高齢者の認知判断能力の低下につけ込んだ悪質な訪問/電話販売、詐欺まがいの契約商法が後を絶ちません

 

合わせて振り込め詐欺・オレオレ詐欺のような特殊詐欺による高齢者の被害も深刻化しています。

 

成年後見制度の活用と、詐欺被害から高齢者を守るという点について解説していきたいと思います。

 

2020年以降はコロナの影響もあり、帰省したり、実家を訪れるという機会は減っているので特に親御さんの状況には気をかけてほしいもの。

 

離れて暮らす高齢のご家族の元を訪れた際に、高額な商品の箱が山積みにされていたり、着物や宝石などの装飾品が増えていた…なんて事案もお聞きしたことがあるかもしれません。

 

必要のない高額なリフォームを繰り返す・・などのような話も嘘のようで実際にあったりします。

(白アリの駆除をしたり、床上、床下の耐震補強や断熱・防湿など…職人→営業マン→上司などの連携でドラマのような展開でリフォームを進めてくることもあるそうです)

 

高齢者の不安を煽りリフォーム詐欺を持ちかけている

 

 

悪質な契約・購入から日が浅ければクーリングオフをする、月額の契約であれば中途解約することも出来ますが、違約金などを支払わなくてはいけないケースも。ご家族や身内の方が被害を訴えたとしても支払った額が戻るという保証はなく、泣き寝入り状態になってしまうこともあり得ます。

 

大切な老後資金を使い込んでしまったというケースでは、生活設計・終活プランも考え直さなければいけなくなります。

もし自分が傍にいれば…と思うこともあるでしょう。

 

判断力の低下した認知症高齢者

 

判断力の低下に伴い適切な時期に、生活の世話・療養・看護及び財産管理に関する事務を行う成年後見制度を活用していたら防げたかもしれません。

 

後見人がついている、ということを伝えれば断り文句にすることで未然に防ぐことも出来たでしょうし、契約締結後であっても判断能力が無かったということで契約を取り消すことで本人を保護することが可能になってきます。

 

ただ、制度発足から20年経っても、後見制度を利用するということにためらいを感じる方は確かにいらっしゃいます。

 

当然メリットもデメリットもあり、

  • メリット  生活や財産の管理を任せることで高齢者を守れる
  • デメリット 後見人の時間/費用面でのコストに加え、ガチガチに守りすぎて融通が利かない、といった部分がある

などになります。

制度を利用すると数年単位での負担となるので、デメリットもしっかりと認識しておく必要があります。

 

ご家族の構成、お持ちの財産の状況、土地や家屋などの不動産の所有の程度、

そしてご本人、ご家族の意向など、多くの点に配慮しないと、財産を守れる反面、財産管理が厳格すぎて不自由な生活を送るということも起こり得ます。相続対策などもやりにくくなってしまいます。

  

高齢者と子供たちで笑顔の相続

 

後見人にご家族などお身内の方がなる場合には手間暇などのご負担の面や、一部の親族にその負担が集中するなどの不公平感が生じることもあります。条件が附されることもあり、裁判所が成年後見監督人を選任し、ご家族とは別に司法書士や弁護士などが財産管理事務の監査を行うよう命じ、費用負担(1~3万円/月額)が生じるケースもあります。知り合いの司法書士・弁護士に頼めるというわけではなく、あくまで裁判所が選任します。

 

親族などではなく、司法書士や弁護士が後見人に選任されるケースでは毎月の費用(3~5万円/月額)がかかります。こちらも親族が任意に指名できず、裁判所の判断を仰ぐことになります。

選ばれた後見人と相性が良くなくても、解任したり別の後見人に代わってもらうことは簡単ではなく、あくまで裁判所の判断に従わざるを得ません。 

 

高齢な親御さんを守るために知っておいていただきたい制度ではありますが、ほとんどのケースで一度後見人をつけてしまうと死亡まで続くことになります。

ただ、相続の事例の部分にはなりますが、相続人に認知症の方が居る場合の遺産分割については後見人を付け、手続きを進めなければならないケースもあります。たとえデメリットがあると分かっていても、避けられない状況も起こり得る、ということはご留意ください。

 

遺産分割協議で法定後見人が押印する様子

 

出来ることなら生前に色々な他の制度を確認して、対策として活用できるものはないかを検討して頂きたいものです。

遺言の作成や家族信託、生命保険の加入や死後事務委任契約などは認知症と診断される前に終活・相続対策として考えておきましょう。

 

 

 

当事務所でも成年後見人の申し立てを多数行っており、各種高齢者の事例を分析し、制度の活用に当たっての注意点や、後見人の選任の大まかな目安(裁判所では後見人の選任基準を公開してないのであくまで目安です)など、アドバイスが出来ます。

 

高齢な方ご本人からの相談、親御さんや親しい親族を気に掛ける方など、多くの方からのご相談があります。

認知症が進行して誰の目にも判断が怪しい、といった状態になる前にぜひ一度ご相談いただければと思います。

 

高齢者の介護をする成年後見人たち

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