【数次相続】放っておいた相続案件

相続手続きを放置して数次相続になってやること山積み

以前の記事「相続手続き、いつまでにする?」で、早めの手続きをおすすめしました。

今回は、放っておいた相続はどうなるか、過去の実例をお話したいと思います。

 

ご相談者はAさんとします。

最初のご相談は「数年前に亡くなった義父の相続登記をしたい」といったものでした。

この時、Aさんからのヒアリングで得た情報によれば

1.相続すべき預貯金がいくらかある。

2.義父は元は地主の家系で、受け継いできた土地が幾らかある。

3.相続人は、養子・Aさん(いわゆる婿養子)・Aさんの義妹・Aさんの実子(長女・Aさん妻の代襲相続人)の3人である

ということでした。

 

最初はシンプルな相続人関係

このような相続関係になります。

 

三人の相続人で協議もまとまっており、あとは遺産分割協議書を作成して、各相続手続きを行うだけ・・・

義父が亡くなったのは数年前なので、必要書類収集も、そこまで困難ではなさそうです。

シンプルな相続案件だと考え、受託しましたが、不動産の調査を開始したところ、とんでもない事実が判明しました。

 

Aさんの義父の相続財産であるはずの不動産、所有者が義父ではなかったのです。

義父は、生前確かにそれらの不動産を管理し、固定資産税も納付していましたが、登記名義上は別人の所有でした。

姓はAさんと同じでしたので、親族であろうことは推測できましたが、Aさんにも心当たりのない方との事。

平行して戸籍の調査を進めた結果【Aさんの義父の祖父】の名義であることが判明しました。

つまり、曽祖父の代から相続手続きを放置し続けていたということです。

 

 

相続未了土地に悩む50代女性Aさんの妹のイメージ

 

このような案件の場合、まず曽祖父がいつ亡くなったか、によって、相続手続きは大きく変わります。

戦前は「家督相続制度」によって「家督相続人」が全ての財産を相続していました。

現在のように、法定相続分といった考え方はなく、協議も必要ありません。

昭和22年5月2日までに亡くなった人の相続については、この家督相続により手続きを行います。

Aさんは曽祖父から見て長男の家系(所謂本家筋)にあたるので、家督相続であれば、話はほんの少し楽になります。

 

しかし、Aさんの曽祖父が亡くなったのは、昭和40年に入ってからでした。

家督相続ではなく、現民法による手続きが必要となります。

 

まず、主軸となる曽祖父の相続ですが、曽祖父が亡くなった時点の相続人が誰かを調査します。

曽祖父の出生から死亡まで、全ての戸籍を調査します。

曽祖父の配偶者と子供が相続人です。

曽祖父は明治前半生まれ。当時は子沢山の時代。。。相続人は5人いました。(少ない方です!)

相続人は、みなさん大正生まれです。

お一人を除いて、全員他界されていました。

 

二次相続の発生です。

 

 

2次相続と代襲相続で頭をかかえてしまう

 

 

亡くなっている方(4人)の相続人を調査しなくてはなりません。

こちらも、亡くなっている方の出生から死亡まで、全ての戸籍を調査する必要があります。

一体何通取得すれば完了するのか・・・除籍謄本や改製原謄本は1通750円かかるので、費用もバカになりません。

お一人5通位でおさまることが多いので、ざっくり

750円*5通*被相続人5名=18,750円・・・(涙)

 

亡くなっている方は大正生まれ、そのお子さんは戦前戦後の昭和初期のお生まれの方たちです。

関係的にはいとこ同士になりますね。総勢10名相続人がいました。

この中に、大本の依頼であるAさんの義父もいらっしゃいます。

ご存命だったのは5名のみ・・・亡くなった5名の相続、三次相続の発生です。

 

このように、相続手続き未了のうちに、相続人が亡くなってしまうケースを、数次相続と言います。

 

最初の相続が発生した時点で、次に亡くなった方は相続財産を承継する権利があったわけです。

手続き未了のうちに亡くなってしまったからと言って、無視して手続きを進めるわけにはいきません。

相続人の立場は、その相続人が承継します。

被相続人が複数いることで、通常の相続と比べて難易度が上がります。

 

この文章だけ読んでいても、ピンとこないですよね・・・(^_^;)

ご依頼時にイメージした相続関係図を最初の方に記載しましたが、最終的な相続関係図は、このようになりました。

 

親族関係が謎に拡大してしまったの図

 

青いマスキング部分が、今回の依頼人であるAさんです。

 

登記名義人は、赤いマスキングの曽祖父です。

調査の結果、相続人は総勢18名となりました。

 

もしAさんの義父や祖父が、きちんと相続手続きをしていれば、もっとシンプルな手順で済みました

「登記しなければ、税金の請求がこない」なんて間違った知識も昔はまかり通っていたようで、こういったケースはたまに見かけます。

Aさんは、会った事のない親戚と、遺産分割協議をしなければなりませんでした。

実質、Aさんの義父が管理維持してきた不動産とはいえ、売ればそれなりの金額になるはずです。

18人の相続人全員が、Aさんが相続することに納得するとは限らないのです。

かと言って、登記名義をAさんにしなければ、今後不動産を担保に入れてローンを組むことすらできませんから、不動産の建て替えや投資運用もままなりません。

 

今回は地主さんのお話でしたが、これは一般家庭でも変わらないのです。マンションや一軒家などのマイホームの相続でも同じです。

放っておけばおくほど、手続きは煩雑化し、費用も増えていきます。

相続手続き未了の方、疎遠な親族との連絡・調整などが難航しそうな方は是非お早めに専門家にご相談下さい!

 

 

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