相続登記は義務ではないの?
先日、不動産の相続手続未了問題についての記事が目に留まりました。
その中で、少し気になったワードがあります。
「相続登記は義務ではありません」
司法書士事務所としては看過できない言葉ですが、事実です。
表示登記以外の登記は、義務ではありません。
「なんだ!義務じゃないんだ!」
「義務じゃないなら、費用をかけて相続登記なんかしないわ!」
…となるのが、人情の常ですよね。
※報道などで相続登記は義務化されてのでは?と思われるかもしれません。実際義務化はされるのですが、いつから…?となりますよね。 相続登記の義務化が開始されるのは、2024年4月1日から となっています。
なぜ、人は登記をするのか
義務でないのに、なぜ、不動産を登記するのか。
まずは、基本的に、登記とは何かをおさらいしたいと思います。
不動産登記とは、不動産の「物理的現況」と「権利関係」を公示するものです。
登記事項証明書をご覧頂くとわかりやすいです。
登記事項証明書
上記の画像は、法務省HPで公開している、土地の登記事項証明書の見本になります。
まず、表題部という枠があり、不動産の所在や、その土地の用途、大きさが記載されています。
これが「不動産の物理的現況」にあたる部分です。
この表題部を「表示登記」と言います。
この表示登記は義務で、必ず行う必要があります。
例えば新しく建物を建てたら、所在・家屋番号は勿論、住居なのか店舗なのか工場なのか、その種類や、建物の構造等を登記することは、義務です。
少し前に、シンデレラ城の登記事項証明書がネットで話題になりましたが、シンデレラ城も勿論建物。
表示登記が義務づけられているため、登記事項証明書が存在するわけです。
表示登記は土地家屋調査士さんの業務になります。
権利関係を明確に
さて「権利関係」の記載は、大きく2つに分かれています。
表題部のすぐ下にある権利部(甲区)。
甲区には、所有者に関する情報が記載されています。
基本的には一番下に記載されている方が、最新の所有者です。
この見本では、法務五郎さんが所有者であることがわかります。
権利部(甲区)の更に下には、権利部(乙区)があります。
乙区には「所有者以外の権利に関する事項」と記載されているのが、ご確認いただけるでしょうか。
ここには、抵当権や地役権について登記されます。
法務五郎さんは、南北銀行から4,000万円の融資を受けて、この土地には抵当権が設定されていることが読み取れます。
毎月幾ら返済していて、ローン残高は幾らなのか…ということまでは、登記事項証明書からはわかりません。
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これら権利部の下部に「共同担保目録」が掲載されています。
共同担保目録は、登記事項証明書請求時に希望しないと記載されません。
何を表わしているかと言うと、同じ抵当権が設定されている不動産が記載されているのです。
この土地と、この土地の上に建っている建物、合わせて担保に入っているということがわかります。
司法書士事務所では、抵当権抹消のご依頼時に必ず確認する欄です。
勿論、1度も抵当権や地役権等が設定されていない不動産については、権利部(乙区)や共同担保目録の掲載はなく、権利部(甲区)だけのシンプルな登記事項証明書が発行されます。
登記事項証明書から見えてくるものも
ご覧頂いておわかりになるかと思いますが、その不動産の過去の経緯も含めて、全て一目瞭然です。
例えば相続で受け継いだ不動産、売買で買った不動産、財産分与で手に入れた不動産…中には差し押さえや競売にかけられた過去がある不動産もあります。
登記事項証明書を見ただけで、色々なドラマが見えてくることもあるのです。
そして、この登記事項証明書は、誰でも取得することができ、不動産がどのようなものであるか、確認することができます。
これが「公示」です。
登記によって不動産の情報が公示されることによって、不動産の売買や抵当権の設定等、円滑かつ安全な取引をはかることができます。
また、不動産については、登記をしていなければ、第三者に対して対抗することができません。
登記することによって、初めて権利を保全することができるのです。
ここに、義務ではないのに不動産登記を行う理由があります。
義務じゃないけど積極的にやらねばならない、という事になりますね。
最近は相続登記を放置して空き家になるなど社会問題化しており、罰則と共に登記の義務化も検討されています。
少し長くなってしまったので、続きは次回に。
登記は義務ではありません②・・・購入時のみ張り切って登記する不思議 へと続きます。
ブログテーマ → 相続事例
も参照頂ければと思います。
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