権利証は死守しないでもいい
前回のブログ 不動産の権利証のお話 に引き続き、不動産の権利証(登記識別情報通知)にまつわるお話をしたいと思います。
権利証は大事に保管して下さいと結びましたが・・・
ゴールデンウィークや夏休み・冬休みに年末年始で久しぶりに家族と顔を合わせて相続の話題になり、ふと権利証を探してみたら見つからない・・・
「紛失してしまったのか・・・」と落胆したり
その他にも、例えば、家が火事になった時。
権利証がー!と、燃え盛る家に危険も顧みず突入する・・・みたいなシーンをドラマで見た記憶ありませんか?
そんな必要、全くありません!
命が一番大事です。
わざわざ取りに戻ってはいけません。
「それはそうだろうけど、でも権利証は貴重品だし、ないと困るでしょ!」
と思われた方。
権利証はなくても、何とかなります。
前置きが長くなりましたが、権利証がない場合の手続きについて、今回はご説明します。
再発行できなくでも保全は出来る
まず、権利証(登記識別情報通知)は、汚れたり・紛失しても再発行はできません。
盗難されても同様です。
盗難された場合
- 勝手に不動産を売り払われてしまうのではないか
- 権利証をタテに立ち退きを迫られるのでないか
- 不動産を担保に入れられて、莫大な借金を負わされるんじゃないか
等々が、ドラマで出てきそうな不安要素でしょうか(笑)
まず、1と3についてですが、不動産の売却や抵当権設定(借金を背負わされる)は、権利証だけあっても不可能です。
所有権移転登記や抵当権設定登記をする際には、一般的に司法書士が登記申請を行います。
司法書士はたいてい、買主や金融機関が指定しますから、その時点で第三者の介入があります。
司法書士は登記にあたって、公的身分証を確認した上で、ご本人確認を必ず行います。
ご実印と印鑑証明書も必要です。
ごく稀に、権利証やら免許証まで偽造した偽売主による詐欺事件はありますが、権利証が盗難された際に、不正登記防止の申出を法務局にしておけば、その権利証が利用された場合、司法書士や法務局の登記官が気付けるため未然に防ぐことも可能になってきます。
必ず届出をしましょう。
2については、権利証はただの紙っぺらです。(大事な紙っぺらですが・・・)
紙っぺらだけ持っていても、不動産に対して何の権利も主張できません。
所有権の登記があって、初めて権利を主張できます。
先に述べたとおり、所有権の移転登記には踏まねばならない手続きや本人確認・印鑑証明の準備・第三者の介入などハードルがありますから、容易ではありません。
ですので、権利証を盗難された場合でも、不動産を失ってしまうリスクは低いです。
登記識別情報通知(平成17年・2005年改正以降の権利証・登記済証の互換)の場合は、パスワードの「失効」ができるので、失効しておけば安心です。
権利証無くて困る事
では、お家の権利証をなくしてしまったらどうなるのか?
権利証がない場合に困ることとしては・・・
やはり売却したい時・不動産を担保に借入をしたい時です。
(相続登記でも登記済証が必要なケースはありますが、通常は不要です。)
再発行が出来ないため、手続きを進めるのにひと手間掛かってしまいます。
紛失時の対処法
その際には、具体的に3つの対処法があります。
■事前通知
登記申請をした法務局から、申請に間違いがないか、本人限定受取郵便で通知が届きます。
本人限定受取郵便は、書留等と違って、在宅の家族が受け取ることはできません。
申請に間違いがなければ、通知書に、登記申請時に利用した印鑑と同じ印鑑を押印し、二週間以内に返送します。
(司法書士としては、二週間以内に確実に返送して貰わないと登記が完了しないので、不安要素いっぱいの制度です。法務局は1日遅れても甘くみてはくれません。)
■本人確認情報
司法書士が「本人確認情報」を作成して、職印を押印し、本職の印鑑証明書を添えて法務局に提出をします。
実際に面談をして、登記名義人に間違いがないかを確認します。
(事前通知と違って、司法書士の仕事次第で登記は完了しますが、かなりの重責です。)
■公証人による本人確認
これはあまり一般的ではなく、弊所でも行ったことがありません。
公証役場に出向き、公証人に本人確認をして貰う方法です。
公証人による本人確認を行った上で、公証人の面前で書面に署名押印をします。
司法書士がなんとか出来ます
権利証がない場合、司法書士としては重責ですが、本人確認情報を提出します。
依頼者と司法書士間で完結できますから、依頼者の手間や負担が少ないことと、登記を確実に完了できるため、本人確認情報で手続をすることが多いです。
というわけで、権利証がなくても何とかなるのです。
死守する必要はありません。
けれど、もし登記で権利証が必要な場合・・・司法書士としては、できれば権利証があると助かります(笑)
なので、死守する必要はありませんが、大事に保管して紛失しないように、できればお願い致します。
不動産の登記についての費用は → 費用一覧
その他 不動産登記
の欄を参照ください。
ブログテーマ → 相続
→ 遺言
なども参考になればと思います。
関連記事