免許更新の厳格化・返納制度と運転経歴証明書と遺言書

2022年5月免許更新厳格化

 

令和2年改正道路交通法(令和2年6月10日公布)の施行に伴い、令和4年(2022年)5月13日から高齢者(75歳以上)の免許更新時の検査と講習の内容が変更となります。

 

ニュースや新聞などで目にした方も多いかもしれませんね。

 

具体的には、認知機能検査と高齢者講習の内容が変更され、75歳以上の高齢者の免許更新が厳格化されます。

 

更新における検査などで認知症と診断されることがあれば、更新拒否・免許停止・取り消しになるとも言われております。

 

そういった状態で医師による診断を推奨されるようになるほどまでに認知判断力の低下が進んている事になると、その他の法律行為などの支障となる事も。

 

遺言書の作成が無効となったり、不動産の売却手続きの際に後見人を付ける必要が出てくるなど、生活において不便を感じることも出てくるかもしれません。

 

免許更新厳格化が報道で言われていることもあり、遺言・後見人についても併せてなどブログで解説していきたいと思います。

 

事故・違反歴があると更新はより大変に

 

認知機能の低下によって生じやすい一定の違反行為や事故を、更新の前3年以内にした方は、追加認知機能検査を受けることになります。

 

その違反と言うものの一例としては

・信号無視 ・通行禁止違反・進路変更禁止違反・交差点右左折等方法違反・横断歩道等における横断歩行者等妨害・指定場所一時不停止等・合図不履行・安全運転義務違反などなど

 

それ単体では違反点数も大きくなく、一発免停になる事もない軽微な違反の部類かもしれませんが、見過ごすと大きな事故へと繋がっていくリスクがあるもの。認知機能が低下すると操作ミスや交通違反ミスをし易い傾向にあるようですので、ピックアップされており、検査・講習となるようです。

 

こういった診断や、注意力低下に関しては非常に大切な指摘でして、免許の返納を検討する材料にもなります。

 

同時に、そういう認知・判断能力低下の予兆を感じる頃、出来ればその前のタイミングでは、相続対策として終活を始めたり、遺言を書くことを検討されるのがベターです。

 

自分だけはまだ大丈夫という過信を抱きやすいので、注意しましょう。

 

 

日常生活の中では問題が無いため認知機能の衰えを自覚しにくいものの、自動車運転時には比較的発現しやすいものをまとめたものが、「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」と言う物です。

 

運転時認知障害早期発見チェックリスト30
番号 運転時認知障害早期発見チェックリスト30 チェック欄
1 車のキーや免許証などを探し回ることがある。  
2 今までできていたカーステレオやカーナビの操作ができなくなった。  
3 トリップメーターの戻し方や時計の合わせ方がわからなくなった。  
4 機器や装置(アクセル、ブレーキ、ウィンカーなど)の名前を思い出せないことがある。  
5 道路標識の意味が思い出せないことがある。  
6 スーパーなどの駐車場で自分の車を停めた位置が分からなくなることがある。  
7 何度も行っている場所への道順がすぐに思い出せないことがある。  
8 運転している途中で行き先を忘れてしまったことがある。  
9 良く通る道なのに曲がる場所を間違えることがある。  
10 車で出かけたのに他の交通手段で帰ってきたことがある。  
11 運転中にバックミラー(ルーム、サイド)をあまり見なくなった。  
12 アクセルとブレーキを間違えることがある。  
13 曲がる際にウインカーを出し忘れることがある。  
14 反対車線を走ってしまった(走りそうになった)。  
15 右折時に対向車の速度と距離の感覚がつかみにくくなった。  
16 気がつくと自分が先頭を走っていて、後ろに車列が連なっていることがよくある。  
17 車間距離を一定に保つことが苦手になった。  
18 高速道路を利用することが怖く(苦手に)なった。  
19 合流が怖く(苦手に)なった。  
20 車庫入れで壁やフェンスに車体をこすることが増えた。  
21 駐車場所のラインや、枠内に合わせて車を停めることが難しくなった。  
22 日時を間違えて目的地に行くことが多くなった。  
23 急発進や急ブレーキ、急ハンドルなど、運転が荒くなった(と言われるようになった)。  
24 交差点での右左折時に歩行者や自転車が急に現れて驚くことが多くなった。  
25 運転している時にミスをしたり危険な目にあったりすると頭の中が真っ白になる。  
26 好きだったドライブに行く回数が減った。  
27 同乗者と会話しながらの運転がしづらくなった。  
28 以前ほど車の汚れが気にならず、あまり洗車をしなくなった。  
29 運転自体に興味がなくなった。  
30 運転すると妙に疲れるようになった。  

引用:警視庁>安全な暮らし>交通安全>相談・お悩み>手続き>事件・事故>警視庁について>交通安全交通事故防止高齢者等の交通事故防止やってみよう!「運転時認知障害早期発見チェックリスト30」

 

上記チェックリストは警視庁のサイトにあり、PDFにて印刷・プリントアウトも可能、親御さんにチェックを入れてもらい、5個以上チェックが付くようであれば、認知機能の病的障害を念頭に専門機関で診てもらうなどの目安として活用しましょう。

 

警察で用意しているチェックリストだよ、と親御さんも納得してもらいやすいと思うので、ぜひ活用ください。

 

親御さんの返納を促すお子様たちへ

 

チェックリストで5個以上チェックが付いたり、認知機能の低下による違反・事故を起こすようになってきたら、お子様から免許の返納を促すようにしていきたいものですね。

 

お盆休みなどの夏休みや、お正月などの冬休みなどの長期の休暇の際に、ご実家に帰った際には高齢な両親とお話をするようにしましょう。

 

実家に停めてある車に傷が付いている、ぶつけた跡があってそのままにしてある等、クルマの状態から読み取れるものもあります。

 

運転経歴証明書を発行する事で、身分証明書が無くて困るということにもなりませんし、自治体や参画企業などから割引でサービスを受けられるなどのメリットもあります。

 

免許の自主返納のメリット

 

例えば当事務所が所在する神奈川県では、免許を自主返納する方へのサポートを行っていたりします。

 

神奈川県警ホームページトップページ > 交通安全 >神奈川県高齢者運転免許自主返納サポート 

 

免許証を返納することで、運転経歴証明書を発行してもらえます。

 

免許証の返納は多くの高齢ドライバーに於いて抵抗感のある事かと思いますが、まわりの人の尽力で少しでも前に進められればと思います。

 

 

運転経歴証明書は公的な身分証明書に

 

運転経歴証明書は運転免許証に記載されていた氏名・住所・生年月日などの情報を証明するものとなり、一般的な顔写真付き本人確認書類としても使用できます。

 

申請場所や受付時間、申請に必要な書類、手数料や要件等の詳細は、神奈川県警>運転経歴証明書>申請手続きについて のページを参照ください。

 

サイズも運転免許証と同じなので、携行にも便利です。

免許証と違い有効期限がないため、長期間活用する事も出来ます。 

 

同時に、判断機能が衰える前に、今の財産の棚卸をして終活をするなど、遺言や不動産関連の財産の相続対策などにも取り組まれるのが良いかと思います。  

 

運転経歴証明書で遺言書保険制度は使える?

 

平成24年4月1日以降に交付された運転経歴証明書であれば、公的な本人確認書類として利用することができます。(平成24年3月31日までに交付された運転経歴証明書をお持ちの方は切り替え手続きが必要です>神奈川県警切り替え手続き案内ページへ

 

運転経歴証明書は自主的に免許を返納した人に交付されるものですので、遺言書保管制度の際の本人確認にも使う事が出来ます。

 

 

運転経歴証明書だからと言って、認知機能が低下していて本人確認・意思確認に於いてデメリットを受けるというわけではありません。

 

むしろ、積極的に返納をされるのであれば、自己の状態を正しく認識して他人に迷惑を掛けないよう早めの判断が出来る人であるとも言えるかもしれません。

 

こういった免許更新厳格化のタイミング、諸々見直しをされていくと良いかもしれません。

 

関連記事