公正証書遺言での指定があっても…
【相続する?相続放棄する?】のブログで最後に出てきた「遺留分」について、今日はお話したいと思います。
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に認められた、相続財産の割合(最低限保証された取り分)のことです。
分かりやすく、家政婦は見た!的な例え話をすると・・・
夫・妻・子供の三人家族がいました。
三人は夫名義の自宅で仲良く暮らしていましたが、ある日夫が急死してしまいました。
そこに現れたのが、夫の愛人!
夫が生前作成した公正証書遺言を手に「彼は、財産を全て私に遺贈すると遺言しています!この家も預貯金も、財産全て私が頂きます!」と乗り込んできました。
妻と子は、着の身着のまま追い出されてしまうのか・・・!
遺留分は請求できる?
公正証書遺言の効力については、以前【遺言書を書きたい】でご紹介しました。
こんなケースでも、公正証書遺言は法的に有効です。(※自筆証書遺言でも有効です)
でも妻と子供にしてみたら、こんな酷いお話はありません。
そこで「遺留分」です。
相続人が最低限受け取ることができる財産を保証するのが遺留分です。
認められている遺留分の割合は、以下のとおりです。
■直系尊属のみが相続人→被相続人の財産の3分の1
■それ以外の場合→被相続人の財産の2分の1
このケースでは、相続財産全体のうち、妻4分の1・子供4分の1の遺留分があります。
遺留分減殺請求をすることで、愛人から遺産を取り戻すことが可能になります。
また、遺留分の基礎となる財産は、被相続人が死亡時に有していた財産だけではありません。
死亡前1年以内にされた贈与財産等も考慮し、算出します。
例えば、夫が亡くなる半年前に、愛人に現金500万円貢いでいた・・・!という場合、この500万円も基礎財産に含まれます。
遺留分減殺請求は、遺留分を侵害している相手と遺言執行者に内容証明郵便で意思表示しますが、各相続人の遺留分割合や、遺留分の基礎となる財産について調査が必要になるので、弁護士や司法書士にご相談の上、慎重に判断された方が確実です。
遺留分減殺請求の流れ
さて、遺言書で相続人ではない愛人に遺贈されてしまったケースを例え話にしましたが、遺留分は相続人同士でも勿論主張できます。
遺留分は遺言書の内容よりも優先されますから、相続人のうちの一部に相続させる旨遺言した場合、指定されなかった相続人が納得しなければ、遺留分減殺請求をすることが予想できます。
死後の紛争回避のためにも、遺言書がきちんと効力を発するよう、遺留分を意識した遺言を遺すことも大切です。
特に自営業者・経営者の方などは、事業という財産を後継者(子など)に遺す場合などで、後継者には会社丸ごと(会社の価値・会社の現預金・会社の負債/借金も)渡るものの、事業を承継しない遺族へは何も残らない、と言ったケースもあります。
事業承継が関わってくる相続では、代償分割:相続人のうち、特定の相続人が遺産を相続し、その代償として、その他の相続人に相応の金銭を支払う方法なども考えておくと良いかもしれません。その際には法人名義の生命保険などを活用しするなども一つの手段としてあります。
会社の価値は変動しますし、キャッシュなどで後継者への遺留分相当の物を用意しないとトラブルにもなり得ます。
遺言書で ”誰" に ”何” をというのを明確にされることをお勧めします。
遺留分減殺は、相続の開始を知った日から1年以内に請求しなくてはなりませんから、もし遺言書の内容に疑問がある場合は、お早めに専門家にご相談下さい。
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