8050問題と相続対策

高齢化の中で社会課題となっている引きこもり8050問題とは簡単に原因と状態を考察しつつ、その後の相続対策として司法書士事務所がお役に立てることは何かを考える

8050問題とは

80代の親御さんに面倒をみてもらっていた50代の子どもが、親の死後ひとりでの生活がままならなくなってしまう「8050問題」と言う問題があります。

 

1980年代から90年代にかけて「ひきこもり」という言葉が社会問題となり、当時は10代・20代~の若者特有の問題とされていましたが、その当時ひきこもりになってしまった若者が、約30年経った現在までひきこもりを続けていることが、この8050問題を引き起こしている要因とも言われています。

 

自宅の自室でほとんどの時間を過ごし、家族以外との交流を持たず社会参加しない状態を示すひきこもりについて、厚生労働省はその状態が6カ月以上続くという基準に当てはまると「ひきこもり」と定義するとされています。

ほとんどを家で過ごすと言っても、他人との関わりをほとんど持たない状態は維持しつつ、趣味や近所への買い物などで外出していても「ひきこもり」に含まれるものとなっていて、完全に家から出ないという事を以ってひきこもりと判断しているわけではありません。

  

世帯構造の変化と高齢化

8050問題とは原因なども見ていくと就職氷河期世代にぶつかりますが、その家庭の高齢化と核家族化に伴う世帯構成の変化と引きこもりと介護と相続、遺産分割やその後の生活の悩み

 

内閣府の平成30年度の調査で、全国の40~64歳のうち、推計61万3千人が上記のようなひきこもり状態であることが分かりました。内閣府による27年度の若年層を対象とした調査では、15~39歳の若年のひきこもりは54万1千人と推計されています。

 

調査により、ひきこもりの当事者は中高年の方が深刻であることが判明し、8050問題となり、そして9060問題へと繋がってきています。

 

高齢化社会の中で、「9060問題」として問題そのものが高齢化しており、介護や相続なども関係してきている中で社会課題となっています。

 

参照:世帯数と世帯人員の状況|厚生労働省

 

 

厚生労働省の調査によると、65歳以上の人がいる世帯の世帯構造で「親と未婚の子のみ世帯」の増加傾向も顕著となっています。1986年では11.1%であったのが、2016年には20.7%と、30年間で倍増しています。

 

今後の推移も見守っていく必要がありそうです。

 

 

 

8050問題とは高齢者が抱える問題が経済問題となり65歳以上の者のいる世帯構造の年次推移について引きこもりと関連付けた資料を元に今後の生前贈与や遺言での対策を検討する

中高齢のひきこもり

 

現在一般的に8050問題で言われているのが、高齢の親の年金などの収入を頼りに暮らすケースが多いという事です。

 

親が歳をとれば、健康上あるいは経済上の理由によって、いつか子供の面倒を見きれなくなるときが訪れます。

 

子供の面倒を見るので手一杯になり、親子ともども社会から孤する可能性が指摘され、親が亡くなり、子供が経済的に困窮したり、自分の身の回りの世話が出来ないなどして生活ができなくなる、といったケースが考えられ、孤独死、親子共倒れといった悲劇も起こり得るところです。

 

高齢になってくると、介護の問題や、認知症の問題なども関わってきて、ひきこもりの子供の世話についても考えを改めなければいけない時がやってきます。

 

老々介護(65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者を介護)であったり、認認介護(認知症の要介護者を認知症の介護)であったり、やはり、高齢化に伴い老老介護がやがて認認介護に発展するケースもあり、子供を支えるのが難しくなる時が来ます。

 

 

 

同居している自宅の相続であったり、別に自立している兄弟姉妹がいる場合など、親亡き後の生活の再建であったり、その後の収入面のなども踏まえ、相続の際の財産分割についてもご家族・親族などでお話し合いをされるのが望ましいでしょう。

 

生前に遺言を作成することや、死後事務委任契約を結ばれるのも、選択肢の一つに上がってくるかもしれません。

参照:死後事務委任契約と遺言と

 

 

お子さんの状態などによっては、任意後見制度の活用、民事信託制度などを利用し、お子さんが財産を浪費しないような仕組みづくりも検討の価値があるかもしれません。

参考ブログテーマ:成年後見制度

 

8050問題の原因では精神疾患の事例も多く、高齢者が抱える問題点と重なり、老後の対策と社会復帰に向けた対策とで問題点と向き合わなくてはいけない

ひきこもりの今後と相続対策

 

ひきこもりになったきっかけで最も割合が大きいのが「職場になじめなかった」と「病気」となっています。次いで「就職活動がうまくいかなかった」「人間関係がうまくいかなかった」といった理由が並んでおり、就職氷河期世代などの影響もあり、ブランクが長くなると再就職が困難なケースもあると言います。

 

政府としても就職氷河期世代の支援を行っていたりします。ひこきもり状態から脱し、社会参加をする際の参考になるかもしれません。

⇒ 厚生労働省・就職氷河期世代の方々への支援について

 

就業困難なほどのご病気、精神的障害(うつ病など)の場合には、障害年金を請求できるケースもあります。公的支援や障害年金専門の社会保険労務士さんなどにご相談されるのも一つです。

 

 

対人関係に抵抗がある場合の復職の第一歩として、ネット上でお仕事をすることも慣らしには良いかもしれません。クラウドワーカー、クラウドソーシングであれば受注から業務完了までを自宅でネット上で完結できることもあり、人と会わずに心理的な負荷も少なく一人で仕事をすることもできると言います。

 

他にもフードデリバリーサービスなど請負などで行う業務は比較的人との関わりが少なく働けることも有ります。こうした新しい働き方も、有効なひきこもり対策、社会参加になり得るので検討の価値があるのではないかと思います。

 

8050問題の世帯にも、いずれ相続が発生することがあり、その後に不安を感じることも有るかと思います。

生前の親御さんが手を打つ相続対策(遺言・死後事務委任・任意後見・民事信託)と、お子さんの社会復帰・再就職・自力で収入を得て自立すること、2本立てで対策を検討されて行かれると良いかと思います。

 

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